仕事に限らず、何においても段取り八分仕事二分と申します。
準備が出来ていれば、実際の仕事は段取り通りに進めれば良いだけ!
事前にしっかりと準備しておけば、質とスピードは確実に増します。
段取りの段階で成否は八割決まっているも同然なのです。
偉そうに言ってますが、クッソ苦手です。
最初はしっかりと段取りしようとするのですが、準備ばかりだとモチベーションも下がり
尻すぼみになって投げやりになっていく。。。
そんな私でも出来ちゃう、簡単だけど
こうかは ばつぐんだ!
的なスジボリテンプレートの自作についてのやり方をご紹介します。
ちょっとウンチクをたれるので、作り方だけ読みたい方は
で、スジボリテンプレートを自作します。からどうぞ
スジボリの意味と必要性
※多分に個人的な意見を含みます
なぜスジボリを彫るのか?
哲学的な話ではなくて表現的な話です。
おおよその場合、面に対して線を彫ることで情報量を増して、より精密なイメージを付与したい時にスジボリを用いるのだと思います。
この点はデカールと似た性質を持っていると個人的は思っています。
また、同じスジボリでも2種類のスジボリがあり、その用途も違ってきます。
作るものや表現したい方向性によってどちらを使うべきかは決まってくると思います。
リアリティや機能性を考察して表現したい場合はパネルライン
コンセプトやグラフィカルな表現として使う場合はデザインとして使う
この2つを混在して使うのはチグハグになりがちでオススメしません。
流線型の車のボンネットに突然ゴチャメカが付いていたら
それはそれでカッコいいかもしれないけど、どっちつかずで両立させるのはなんだかとってもハードルが高そうです。
また、スケール感を無視して彫りすぎると情報が過多になり、グチャグチャしたイメージが先行します。
デカール同様に過ぎたるは及ばざるが如し。やりすぎも良くありません。
やりすぎても上手く見えるのは全体的なバランスと要所を抑えているからでしょう。
並大抵のセンスでは出来ません。少なくとも私には無理です。
なので、自分がどういう方向性で作るのかによって、スジボリの種類を統一していくと良いでしょう。
で、スジボリテンプレートを自作します。
ゴタクはここらへんにして実務に移ります。
スジボリで誰しもがぶつかり、面倒に感じるのは左右対称、シンメトリです
左右非対称のスジボリはパネルラインでも、デザインでもあり得るものですが
大半は左右対称に彫ることが多いハズです
そして、左右の長さや角度がずれたスジボリほどガッカリ感が増すものはありません
そこで一番確実なのは左右対称のテンプレートを用意することです。
ですが。。。そう都合の良いものはありませんし、専用のモノなどなおさらありません
なければ作ります。
最初はテンプレなしの彫り方や、プラ板等でテンプレを作るのと同じ工程かと思います。
なんとなく左右対称でいい人やアナログ作業で左右対称に彫れる熟練者にはオススメしません
デジタルでやれば流石にキッチリとした左右対称のスジボリテンプレが作れますが、段取りに時間がかかります。
以前作ったMGガンダムMk-Ⅱのテンプレはこんな感じでした
これを使って彫ることで簡単にスジボリが彫れるうえに左右対称になります
更にこれは一部、装甲を切り欠くラインも入っており
スジボリ後にそのラインに合わせて切断すると、簡単に左右対称の切り欠きが出来ます。
作業途中の写真とテンプレを見比べると、どこを彫るのに使ったかがわかるかと思います。
下書きとデータ化
なんとなーくこんな感じのスジボリをしたいというのをシャーペンで直に書き込みます。
ざっくりこんなイメージでってくらいで良いと思います。
後ろスカートはパネルラインとしてのスジボリですが
フロントスカートはパネルラインに加えて少しだけ線を延長してデザイン性を付加してみました。
この程度の混在ならギリギリ両立可能かと思います。
マスキングテープを貼って上からマッキー等でなぞります。
まだ大体で良いと思います。
ただし、テンプレを貼るための基準となる頂点や線は決めておくべきです。
せっかく作ったテンプレートも貼る際にずれてしまっては
テンプレート使ったのに左右非対称のガッカリスジボリが誕生してしまいます。
紙などに貼ってスキャナーで読み込みます。
簡単な線同士のレイアウトであれば、面をまたがって1個のテンプレートにしてしまっても大丈夫でしょうが
複雑なレイアウトやスジボリをするパーツの形状によっては、面ごとにテンプレートを作ったほうが精度は増します
採寸とデータ上での清書とテスト印刷
ここまではざっくりと作業してきましたが
テンプレートはキッチリと作っておくと当然、精度は増し、作業がやりやすくなります
ざっくりとした形状だけをデータ化したのでそれをベースにデータ上で清書していきます。
レイヤー機能と線が引けるソフトならなんでも良いのですが、ここでもillustratorかInkscapeが使えると話が早いです。
スキャンしたおおまかな形状に合わせて、現物のパーツを採寸しつつ書き上げます。
長さや角度等を図りながらスキャン画像と照らし合わせつつ書いていきますが、データ上でのさぎょうなので何度でもやり直しが効きます。
というか、実際にスジボリをするまでテンプレは何度でも作れるので色々なパターンを試して
自分が表現したい理想のスジボリを探すことも出来ますし、セオリー通りのテンプレを作るのも思いのままです。
書き上がったらリフレクト機能等で左右対称に複製しておきます。
今回は起点となる点と線はこのように決めました。
ここをパーツに合わせて貼るとピッタリ左右対称に貼れます。
出来たら紙に印刷してみましょう、デジタルは作り込みがしやすいのでガンプラのHGサイズ等はスケール感を意識して程々にしないと、緻密に作ってしまうことがあります。(ありました)
デカールならまだしも、実際に彫れないくらい緻密なテンプレートを作っても使えません。
では、この印刷した紙を切り抜いてパーツに合わせてみましょう
起点と線を使って位置を合わせるとこんな感じになります。
当初のイメージどおりのスジボリが彫れるテンプレートの原型はできてそうです。
コピー用紙なのでこれをテンプレにするのは若干、無謀な感じもしますが、これにガイドテープ等を張り合わせてスジボリをすることも不可能ではないでしょう。
後述するシールシートを入手するのが面倒な人はこの紙型を活用するのも有りでしょう。
印刷とカッティングプロッター
さて、テストも終わり、形状的にも良さそうなのでテンプレの素材に印刷してみましょう。
私が愛用しているのはコチラです。
- シールなのでそのまま貼れる
- 局面への追従性も良好
- インクジェットで印刷可能
スジボリテンプレになるために生み出されたと言っても過言ではない逸品です。
難点があるとしたら若干薄いので、慎重に作業しないといけない点くらいですが
そもそもスジボリはゆっくり力を入れずに何度か撫で彫るのが線をガタつかせない基本なので大した問題にもなりません。
で、そのシートにインクジェットで印刷してみました。
簡単な直線のみのテンプレートですので定規などで丁寧に切り出せばスジボリテンプレートの完成です。
ただ、いくら精密に作ってもこの切り出しでミスをしたら当然左右対称にはなりません。
なので私はカッティングプロッターを使うぜ!
なくても良い、けどあると超便利なカッティングプロッター
テプラ本体よりも高価なのでわざわざ買う必要は無いです。(買ったけどさ)
シール部分はしっかりカットしてくれるけど、台紙は切り抜かないように調整しているので
必要な部分だけペロリと剥がれます。超便利!
貼って彫る
あとはテンプレートを決めておいた起点と線に合わせて貼ります。
程よい粘着力があるので数回くらいなら貼り直しや使い回しも出来ましょうが、基本的に使い捨てのつもりで使用してください。
複数パーツに同じスジボリをする場合はケチらずに個数分テンプレを用意したほうが良いと思います。(が、手作業で切り抜く場合は切り出しに注意しないと個体差が出てしまいます)
あとはいつも通りの作業でスジボリを行ってください。
彫った結果がコチラです。
当初のイメージ通りに彫れました。
通常ならディバイダー等で線の交点に印をつけつつ左右対称になるように反対も彫りますが
反転したテンプレートがあるので貼って彫るだけです。
多少手を加えておきました。
大きな線が左右対称なら細かい彫り込みは多少ズレていても気にはなりません。
ビフォー・アフター。ここまでの作業時間は30分程度でした。
最初にテンプレを作る手間をかけるか、採寸しつつ彫っていくか
テンプレがなくても道具があれば正確に左右対称に早く彫れる才を持っている人には時間の無駄ですが、大半の人はこのひと手間によって正確に左右対称に彫れるのオススメです。
まとめ
ご紹介したように、慣れてしまえば簡単にテンプレートが自作できるので、スジボリを左右対称に彫るのが苦手な人は精度が上がり、彫る作業自体は格段に省力化できます。
同様の方法でプラ板を切り出して貼ったり、箱組のテンプレをつくったりの工作に応用できるのでスキャンしてデータ化する技術は身につけておいて絶対に損にはなりません。
おまけ話
RGなどではよくありますが、パネルラインで成型色が違うパーツになっていて、より別パーツ感が増し精密度が高く見えます。
HGのようにフレームがなく1パーツで内部構造と装甲を両立しているような簡易なパーツでもスジボリと合わせると1個のパーツを複数パーツに見せることが出来るようになります。
こんな感じで近似色で塗り分けると効果的でしょうか
MGガンダムMk-Ⅱでは脚部にはほとんどパネルラインがなかったので
くどいくらいにパネルラインを入れてホワイトとグレーで塗り分けました
セイバーガンダムとインパルスアルクをミキシングした際には
フロントスカートは別パーツですがサイドスカートは1個のパーツだったのを
スジボリでパネルラインを入れて塗り分けたり
メンテナンスハッチとして開きそうな部分も塗り分けて別パーツ感を付与してあります。
スジボリと一口に言っても表現の幅や彫り方は広くありますが
人の作品を見るときにスジボリの意味に注目してみると、作者の意図とか考察が理解出来て面白いかもしれませんね